「武士道」が批判した差別主義

アメリカのピッツバーグで、
ユダヤ教の礼拝所を狙った
銃の乱射事件がありました。
いまだこうしたユダヤ人差別というのは、
あるんですね……。
悲しいことです。

じつはナチスドイツが登場する
はるか昔。
明治時代に書かれた『武士道』で、
新渡戸稲造さんが、
反ユダヤ主義を批判しているのを
ご存じでしょうか?

「最近起こったドレフュス事件の裁判では、
フランスの正義が通用しない地域は、
国境を越えたピレネー山脈だけでなく、
はるか世界中に広がっていることを
証明しています」

9章の「忠義」より。
ドレフュス事件とは、1894年、
陸軍大尉だったドレフュスさんが、
「ユダヤ人である」というだけで、
スパイ容疑の冤罪で逮捕された事件です。

絵はそのとき任務を解かれたドレフュスさん。
終身刑の判決は
国際的な反論を受け、逆転判決。
最終的には無罪になりました。

「知性による発見は、
人類が共有する遺産であるが、
国民性の長所や短所は
それぞれの民族が引き継いでいる
固有の遺産である」

新渡戸稲造さんが引用している
社会学者ル・ボンの言葉。

そもそもが身分制だった武士の社会。
鎖国していた狭い環境の中で
「人類は平等」と考えていたかどうかは、
疑問があります。

ただ、それでも新渡戸さんが
民族差別の撤廃を、
ことさら欧米人に向けて書かれた
『武士道』で強調したのは、
当時は日本人も
差別される対象だったからです。

彼は武士のアイデンティティを
世界に理解してもらうことで、
自分たちが欧米人と同等であることを
証明しようとした。

しかも、
「自分たちがそうである」ということは、
「ほかの民族だってそうだよ」と
新渡戸さんは主張したわけです。

その発想は
いまのグローバリズムに近いものであり、
大半の欧米人よりも
ずっと先進的な考えに立っていたわけです。
だから彼は世界に評価され、
国際連盟を任される身分にまでなりました。

世界に差別主義の芽が出ているいま、
明治時代にそういう日本人がいたことは、
ぜひ知っておいてほしいですね。



[武士道の読み方]
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