古典学のススメ20〜眼のある人は必ず見てくれる

夏川オススメの「古典」を
紹介する連載。

今回は戦後期を代表する落語家、
5代目・古今亭志ん生さん
の半生記
なめくじ艦隊』(ちくま文庫)
という本ですね。

落語協会の会長を務め、
今なおファンの多い方……ですが、
戦前、戦後と売れない時代を過ごす、
相当な苦労をされてきた方です。

本の題名にもなっている
「なめくじ艦隊」は、
住んでいた長屋がたびたび
「なめくじ」の大軍に襲われた
……ということから。
家賃もタダ同然だったようですが、
ジメジメしたところにあり、
あっちこっちに隙間がある。

住んだ人もすぐ逃げていってしまう
……ということでしたが、
稼げない時代、修行をしながら
そんな「なめくじ」のように
たくましく生きようとしてきた。

人に媚びず、出会った人を大切にして、
新しい芸をひたすら磨き、
師匠を変えたり、名前を変えたり、
満州に行ったり、
いろんな試行錯誤をしながら、
もがき続けます。

もがけばやがて
応援してくれる人も表れる。
昔の日本のいいところ……かもしれませんが、
出会いを通して
何とか芸人として
やっていけるようになった過程が
本書の中では語られているわけです。

「ほんとうに芸に一身をぶちこんでやれば、
眼のある人はきっと見てくれます」

「だから、人間てえものは、
無駄なときばかり骨を折ったってダメですナ。
何かそういうチャンスがきたときに、
それをガッチリつかまえて奮闘することですよ。
けれども、ただ奮闘するといっても、
はなに自分がそれだけのものを
仕入れておかなえことにゃダメなんで、
ネタのない手品は使えないわけですからね」

その分野を極めた人の言葉は、
やはり含蓄がありますね。



[夏川賀央の「古典学のススメ」]
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